2026.03.02

函館 STEEL 菊池船長に再びお世話になりました。

メンバーは12月もご一緒した新垣さんと、森山さん、私の3人。
今回は12月とは一変。
大寒波、大雪、積雪は約3m。車の運転が最も気になるところです。
今回はデリカの4WD。多少の安心感はありますが、過信は禁物。気を引き締めての移動となりました。
初日は大しけのため、出船中止。
ということで――
お世話になるSTEEL菊池船長に声をかけ、前夜祭。
船長行きつけの「郷」へ。
地元のお客様でにぎわう人気店。
温かい灯りと活気のある店内。海の話に花が咲きます。
海に出られない夜も、決して無駄ではありません。
お酒もほどほどに早めに解散。
左から
菊池船長
新垣さん
森山さん
ホテルへ帰り早速明日の準備を。

翌朝
北西風の影響を受けにくいエリアとはいえ、津軽海峡の激流。潮の変化とともに大きなうねりが打ち寄せます。
そこで、近年注目され始めたショアマグロへ。
菊池船長は以前から取り組んでおられ、今回はご厚意でポイントを教えていただきました。
大雪、マイナス10度、路面凍結は当たり前。
安全第一での移動です。
ポイントに到着すると、誰もいない静かな海。
夜明けを待ち、海況を確認してから磯へと向かいます。
車を降りた瞬間、強烈なイワシの生臭い匂い。

クロマグロが多数いるエリア特有の匂いです。
薄明るくなると、浜へ移動。
途中には大量のイワシが打ち上げられていました。

水温低下により動きが鈍ったイワシが浜へ打ち上げられ、それを効率よく捕食するためにクロマグロが寄っているとのこと。
クロマグロの強さは、これまで十分に体感してきました。
しかし、それを足場の悪い磯から掛けるとなると話は別です。命の危険を感じるほどの緊張感。相当な技量と安全対策が必要であり、決して無理は禁物です。
磯での基本装備はもちろん徹底。
気温マイナス10度の環境では、まず“濡れないこと”が最優先になります。
手足を冷やさない装備で挑みます。
私は磯靴に防水ソックス、さらに厚手のソックスを重ね履き。
手はテムレスを使用しています。
極寒下では一瞬の油断が命取りになります。
寒さ対策もまた、重要な安全装備のひとつです。
メンバーそれぞれ、視界の届く範囲でキャストを開始。
鳥が舞い、イワシの群れが入り、沖ではボイルが始まります。

トップウォーターからスタート。チェイスはあるものの、なかなかバイトに至りません。足元まで追ってくることもあり、追われたイワシが目の前で捕食される場面も。
中には200kgを超えると思われる個体の姿も確認。
これは一筋縄ではいきません。

相当な工夫が必要です。もしこの場所でクロマグロを掛けたら――相当な苦戦は避けられないでしょう。
この日はノーヒット。

すぐに函館市内の釣具店へ向かい、必要なアイテムを補充。
次のチャンスに備えます。
次の日、ついに出船。

極寒の中での出船です。

約一時間でポイントへ到着。
デッキ上には雪が積もり、ところどころ凍結。船長がホースで海水をかけながら氷を溶かし、その合間を縫ってキャストします。とにかく滑りやすく、細心の注意が必要です。
キャストのたびに、足に電気のような激痛が走る。
特にふくらはぎ。
寒さで筋肉が断裂寸前なのかと一瞬不安になるほどの痛み。
後に原因は静電気だと分かりました。
雪とラインの摩擦で帯電し、足からデッキへ抜ける際にバチバチと放電。
今回はクロックスの長靴を使用していましたが、靴や衣類、カーボンロッド素材も影響しているようです。
とにかく激痛。
次回は放電しやすい靴を選ぶなど対策を考えます。
その中で、マグロの捕食が始まりました。
イワシの匂いが漂うエリア。
ショアに近い距離で、まるでヒラスズキでも狙うかのような雰囲気。
ミヨシの“タイソン”こと森山さんにファーストバイト。
惜しくもフックアップならず。
使用ルアーは「Atoll Misao 240 夜光貝Shell」。
タイソンにバイトは続きますが、なかなかドカンと乗らない。
私はスリムポッパーから変更。
少ないチャンス、取り乱しては後が続きません。
どうにか掛けてロッドを曲げたい。
そこで実績のある「HEAD DIP 220F」イワシを投入。
水面が盛り上がり、明らかな反応。
だが――バイトまで持ち込めない。
ルアーの後ろに魚体は見えるが、見切られているのか。
すぐに変更、同じ「HEAD DIP 220F」のピンクへカラー変更。
着水後ワンジャークしポーズを取る、その瞬間、300kgはあるかと思う巨大魚体がルアーの背後から全身を現し、激しい水柱とともにバイト。

一瞬、軽くなりバレたかと思うが、魚は前へ走っている。
反転し重みを感じた瞬間、何度も何度もフッキング。
今回は一瞬のバイトも逃したくない。
(巨大化するクロマグロに対し、少しでもダメージを与え、アングラー側が優位に立つためトレブルフックを選択。
しかも、飲まれた際にもブレイクしないように小細工をしてきました。12月同行した新垣さん自作のフックにヒントをいただきました。

GTやマグロでトレブルを使う際は、曲がりや折れを防ぐためカツイチ、もしくはWayWard Life Production の7/0以上の強靭なフックを選んでいます。)
フッキングは決まった。
ファーストラン。寒さの影響なのか、リールのドラグの滑りが不自然。ノッキングするような感じ。リールは新品なので、おかしい。
スピードに圧倒的な重量感が加わる。恐怖を覚える走り。
止まりかけ、首を振った瞬間――フックオフ。
あれだけ入れたフッキングも虚しく外れました。
菊池船長からは
「シングルじゃないからバレたんだ」と一言。やはりシングルフックか・・・
気を取り直し、自分が頼りにしていてGTやヒラマサでも実績の高い「リベルタンゴ220」に変更。
水深は40m。
シャローへ刺したイワシを捕食しに来ている状況と判断し、よりナチュラルなペンシルを選択。

反応は早かった。
数投目、大きなバイト。しかし乗らない。
その直後、トモの新垣さんにヒット。
ポーズを取っていると、再び私のルアーを襲う魚体。
ダブルヒット。
どちらも明らかにいいサイズ。
雪が積もり凍結するデッキ。滑りながらも、海水をかけて溶かしつつファイト。
ラインが交差しないよう、ミヨシとトモに分かれて対応。
状況に応じてポジションを入れ替える。

今回使用したのはGT・ヒラマサ向けのProtoモデル。
高反発でシャープな設計。
途中ロッドを立ててみるが、数分で限界を感じストレートファイトへ。
強度確認にはこれ以上ない相手。
ロッドの強度は確認できましたが、マグロ専用モデルではないので、体には応えます。
キャスト性能や操作性はしっかり確認できましたので、その後は改良を行います。
新垣さんが先にキャッチ&リリース。

続いて私もキャッチ&リリース。

いつ見ても菊池船長のリリース体制はすばらしい!

船長目測、どちらも170~180kgクラス。

今回使用したフックは、ルアーサイズに合わせた9/0タイプの WayWard life Production のシングルフック Proto。
従来の9/0では、100kg後半クラスになると伸ばされるケースを何度も見てきました。
そこで今回、WayWard life Productionさんに強度を見直した試作モデルをお願いしました。
巨大クロマグロ相手では、フック強度に一切の妥協はできません。
今回使ったルアーはアイ部分が回転式ではないため、普段GTでやっているようにケプラーで結束しています。注意点としては、50号以上のケプラーやザイロンを使い、ザイロンやシーハンターはそのままでOKですが、ケプラーの場合はアロンアルフアのゼリー状などで結び目をしっかり固める必要があります。
このタイプの接続にスプリットリングで行うと、捻じれが生じた際またはてこの原理が働き、固定部分の破損や、フックの折れ・伸びにつながります。
適切な太さで確実に固定することで、余計な可動を防ぎ、フック本来の強度を最大限発揮させることができます。
極限の相手だからこそ、細部の積み重ねが結果を左右します。

このクラスとのファイトも、これまでに何度も経験してきました。
以前に比べれば、難なく獲れるようになってきたと感じます。クロマグロとのやり取りにも、少しずつ慣れてきました。
とはいえ――
やはりクロマグロは別格です。
その強さは圧倒的で、体力も確実に奪われます。
慣れたとはいえ、決して楽な相手ではありません。
数年前、最初の1匹を掛けた時のことは今でも鮮明に覚えています。
掛かりどころも悪く、相当な苦戦。
あの時は一週間ほど熱が出て、寝込んでしまいました。
さすがに、今はそこまでにはなりません。
少しは成長したのでしょうか。
それでも、クロマグロはクロマグロ。
敬意と緊張は、今も変わりません。
その後、海は静まり返り、納竿。

最終日の3日目へ。
朝方は快晴だったが、のちに吹雪。
昨日と同じエリアを探るも反応なし。
さらにショアライン寄りを攻めます。
まるでヒラスズキを狙うかのようなサラシ打ち。
磯に叩きつけられ、離岸流に乗って流されるイワシ。それを効率よく捕食しているようです。
今日も吹雪。
そして、昨日以上に強烈な静電気。
足を走る電気ショックは凄まじく、昨日一本獲った私は、この痛みに耐えきれず一度ロッドを置き、サポートに回ります。
魚探には真っ赤な反応。
「周りはクロマグロだらけだ。デカいのは200kg以上あるぞ!」
菊池船長の檄が飛ぶ。
「なるべく岸スレスレにキャストしろ!」
サラシへルアーを打ち込む。
ブラインドでのキャスト。
クロマグロは相当ルアーを選んでいる様子。
早速、タイソンがヒット。
昨日と同じ「Misao 240 夜光貝」。
サイズも良さそうだ。
新垣さんがホースで海水をかけ、デッキ上の氷を溶かしつつ、その中でのファイト。
しかしここでアクシデント。
リールの不具合でフックオフ。
氷点下14度。昨日以上の極寒。
金属のたわみか、ギアの噛み合い不良やスプールエッジのリムの緩みか発生。明らかに通常とは違う挙動。
車に寒冷地仕様があるように、リールにも極寒仕様が必要なのかもしれません。
その後もイワシの匂いは漂い続ける。
クロマグロの反応は確実にある。
時折、水面が爆発するような捕食。
だがルアーへの反応は得られない。
「クロマグロを食わせるのは簡単だ」と言う人もいる。
しかし実際は、かなりセレクティブ。
カラー、サイズ、波動、シルエット、アクション、引き方――
わずかな差が明暗を分ける。
どの魚を食わせるのも簡単ではない。
雪が収まり、私も再びキャストを開始。
それでもバチバチと静電気が走る。
さらに岸寄りへ船を寄せる菊池船長。

ドン深のエリア、水深は40m。クロマグロ狙いとはいえ、40mしかない。
ルアーは「タンゲーラ270」。
少し大きいかとも思ったが、マグロのサイズが大きいだけに、大きなフックで挑みたい。
カラーはイワシを連想させるマグマホロ。
ベイトが大きい時は、ホロよりも“反射するタイプ”を選択することが多い。
トモの新垣さんにバイト。
惜しくも乗らず。
今、活性は上がっている。
離岸流で白くなったサラシへキャスト。
ワンジャーク。
大きなうねりの向こう側でバイト。
巨大な飛沫。

何度もフッキングを入れる。マグロの口周りは車のタイヤの様に硬い。
デッキ上も場所により凍っている、移動も大変な中、クロマグロとのファイトが始まる。
100kg後半はありそうな個体。
走りも強烈だが、約100m走ったところで止まる。
ここからが本番。
ロッドはテストモデル。
最高の相手だ。
魚が落ち着くまでは脇挟みで対応。
動きが収まったところでロッドを立て、調子を確認する。
これまでとは違うロッドを高く立てて行うファイトスタイル。
バランスの良い角度で耐えていると――
いつも使用しているギンバルが割れた。
氷点下14度。
樹脂製のフレキシブル部が低温で硬化し、耐えきれなかったのだろうか。
新垣さんのカーボン製ギンバル「SAKURA」製をお借りした。
ややローポジションだが、ミドルまで調整して再開。
クロマグロがほぼ直下へ。
ロッドを80度近くまで掲げ、性能を見る。
この日はうねりが高く、船の高低差も大きい。
そのうねりを利用してリフト。ロッドのリフトパワーも合わさり、しっかりと仕事をしてくれる。
その間、菊池船長は魚が最もリフトしやすい位置に来るようフォロー操船。
このロッドはパワーモデル。
曲げ込むほどにリフトパワーが出る設計。
慣れている私でも、大きなうねりの中では一瞬体勢を崩されそうになるほど。
平地で曲げるなら問題ないでしょう。
さらにトモのファイトで前進フォローがあれば、より安定して獲れるでしょう。
やがて船長のフォローもなくなり、いつものスタイルへ。
魚が前に出ればロッドを立て、
下に入れば脇を返してストレートファイト。
さらにはポールを使用し、リールを反転。リールシート部をポールに当て、テコの原理でリフト。
これが意外と有効のようです。
いつもの自分のスタイル。
浮いてきたのは、船長目測170kgクラス。
無事キャッチ&リリース。
テストロッドにとって、これ以上ない素晴らしい相手となったことはもちろんですが、私自身にとっても大きな収穫となる一本でした。
新しいファイトスタイルの有効性、ロッドポジションの使い分け、極限状況下でのバランスの取り方――
多くの気づきと手応えを得ることができました。
魚だけでなく、自分自身の引き出しもまた一つ増えた、そんな価値ある一本でした。
次は新垣さんがかけた!
ロッドは一番好きだと言う「WhiteInsight7610」
余裕のファイトで、キャッチアンドリリース
そして、次はタイソンの出番。
またしても「Misao 240 夜光貝」でヒット。
ロッドは「WhiteInsight 7415」。
タイソンも“いちばん好きなロッド”と言ってくれるモデル。以前にも200kgクラスをキャッチしている実績の一本です。
柔道で鍛え上げた身体。
どっしりとしたファイトスタイル。
しかもギンバルベルトなし。
ロッドを曲げ続ける。
腰を落とさず、体重移動を行わずに、ここまで「WhiteInsight 7415」を曲げ込むアングラーは初めて見ました。
約15分。
その間ずっと立てっぱなし。
魚は浮いた。
約130kg。
タイソン曰く
「体力をつけることで、技量をカバーできれば」。
しかし彼は、技量もあり、体力もある。
まさに鬼に金棒。
さらに経験を積めば――
恐ろしいアングラーになるでしょう。
次は新垣さんにヒット。
ロッドは「WhiteInsight 61112」。
腰を落とし、体重をロッドに乗せ、マグロへプレッシャーをかける。
これは大きい。
200kgはあるかもしれない。
ストレートに構え、さらにスプールを手で押さえハンドドラグで追加の負荷をかける。
徐々に距離を詰める。
その瞬間――
金属的な音。
なんとリールのシャフトが折れた。

手が滑り、スプールが海中へ。
即座にロッドのラインを手繰る。
タイソンがペットボトルで回収。
その後、根掛かり回収棒で順調にラインを拾い上げる。
手でマグロを手繰り寄せる。
なんとすごい人だ!

かなりのサイズだ。
そして海面にその姿。

PEが尾に巻き付いている。
あと少し。
しかし海面に出てもなお暴れるクロマグロ。
一瞬の油断かっ!
手が滑り――
根掛かり回収棒が海中へ。

その後ブレイクとなりました。ラインがつているので心苦しいですが。
そうして納竿
その夜も菊池船長とメンバーで作戦会議

そして函館を旅立つ早朝――
それでも、私たちは再び磯へ向かった。
前回の経験をもとにタックルを見直す。
特にルアーセレクトは徹底的に再構築。
夜明けと同時にキャスト開始。
新垣さんが立て続けに数発掛けるも、無念のブレイク。
私とタイソンにはチェイスのみ。
そんな中――
隣でキャストしている菊池船長が連続でバイトへと導く。
惜しくもバラシもある。
しかし最後のバイトで、完璧なタイミングでフッキングへ持ち込む。
さすが。
その一言に尽きる。
ショアマグロは船とはまったく違う。
直下ではなく、沖へ沖へとラインが走る。
ヒラマサやカンパチのように根に突っ込む危険は少ない。
しかし、200m沖を泳ぐマグロ。
PEが沖のシモリに触れれば一瞬で終わる。
出されては巻き、出されては巻き――
一進一退の攻防。
そして、沖のシモリに触れたのか。
無情のブレイク。
静まり返る磯。
しかし、そのファイトから得られたものは大きかった。
ショアで求められるロッドの要素。
リフトパワーだけではない、角度、追従性、粘り。
ロッドに対する必要な要素は見えてきました。
今回もまた、素晴らしい仲間と共に、かけがえのない時間を過ごすことができた。
極寒の函館。
そこでしか得られない緊張感と経験。
すべてを、ロッド開発へと繋げていきます。
そして――
その後。
菊池船長は磯から、自ら鍛え上げたロッド「WhiteInsight7610」と共に
圧巻の一本をその手にしていた。
凍り付くほどの海面に横たわる巨大魚体。
やはり、この海を知り尽くしている男は違う。

【お願い】
磯でのクロマグロキャスティング
安全第一。
基本装備の徹底はもちろん、
釣行は必ず複数人で。
ロックショアはもちろん、オフショアビックゲームでの十分な経験を積み、万全の準備を整えた上で、フィールドに挑んでください。